泉質SENSITSU

【詳細】温泉の色はなぜ変わる?

泉質に関する読み物 — 成分・泉質名・分析表の読み方

2026年9月6日読了 4分
#泉質
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もっと深く知りたいマニアのための化学解説

ここから先は、温泉の色の変化を「イオン」や「微粒子の成長(重合)」といった一歩踏み込んだ化学の視点で解き明かします。

1. 「緑透明」の正体はポリ硫化物イオン

(対象:濃い硫黄型の硫黄泉など) 白く濁らずに緑色の透明になる硫黄泉は、硫化水素がガスや固体(コロイド)にならず、お湯にイオンとして溶け込んでいる状態です。アルカリ性〜中性の環境下では、硫黄原子が複数繋がった「ポリ硫化物イオン」という特殊な状態になりやすく、これが可視光の青〜紫付近を吸収するため、人間の目には補色である緑〜黄色に見えるのです。

2. ミルキーブルーを決定づけるシリカの重合速度論

(対象:メタケイ酸が豊富なブルーの温泉) 透明なお湯が青く変わる現象は、メタケイ酸(モノマー)がお湯の温度低下に伴って過飽和状態になり、結合して大きな粒子(ポリマー)へと成長する過程で起こります。この天然のガラス微粒子の直径が、光の波長に近い「数十〜数百ナノメートル」に達した時、ミー散乱およびレイリー散乱によって青い波長が強く強調されます。時間経過(コロイド成長)と温度低下の条件が完璧に揃わないと現れない奇跡の色です。

3. 「鶯色」を生み出す鉄イオンの中間状態

(対象:笹濁り・鶯色) 鉄分は、還元状態(湧出時)の鉄(II)イオン(Fe²⁺)では薄い緑色を呈し、完全に酸化した鉄(III)イオン(Fe³⁺)では赤褐色を呈します。笹濁りや鶯色は、このFe²⁺からFe³⁺への酸化プロセスの中間段階にあり、かつ炭酸水素イオンなどの他の成分が鉄イオンに配位結合して安定化することで、独特のくすんだ緑〜茶の中間色を保っていると考えられます。

鉄と炭酸が織りなす「色の一直線(タイムライン)」

源泉が湧き出してから、空気に触れて時間が経つにつれて、以下のように一直線に変化していきます。

① スタート地点:透明(湧出直後)

  • 状態: 地下から湧いたばかりの鉄分は「第一鉄イオン(Fe²⁺)」という状態で、水に完全に溶け込んでおり、色は無色透明〜ごく薄い緑色です。

② 第1形態:笹濁り・鶯色(酸化の初期段階)

  • 状態: お湯が空気に触れ始めると、一部の鉄が酸化し始めます。ここで炭酸成分が多いと、鉄イオンが炭酸と手を結び、薄い緑や茶色が混ざった「炭酸鉄」などの複雑な化合物を形成します。

  • なぜこの色?: 酸化しきっていない緑色の鉄(Fe²⁺)と、少しサビ始めた赤い鉄(Fe³⁺)、そして炭酸成分が絶妙なバランスで混ざり合っている、まさに「変化の途中」にだけ現れる色です。

③ 第2形態:黄土色濁り(共沈・絵の具のブレンド)

  • 状態: ここで「炭酸水素イオン(HCO₃⁻)」が本領を発揮します。

  • お湯から炭酸ガス(二酸化炭素)が空気中に逃げると、お湯の中に「白い粉(炭酸カルシウム:CaCO₃ など)」がドバッと生まれます(これが温泉の析出物や湯の花になります)。

  • なぜ黄土色?: 鉄が完全にサビて「赤」になろうとしているのに、炭酸水素イオンが生み出した「白」い粉が同時に混ざって沈殿します。【赤いサビ + 白い粉 = 黄土色】という、絵の具を混ぜたような物理的なブレンドが起きて黄土色になります。

④ 最終形態:赤濁り(完全酸化)

  • 状態: 炭酸ガスも抜けきり、時間をかけて鉄分が完全に酸化(サビ)しきった状態です。

  • なぜ赤濁り?: 全ての鉄が「水酸化第二鉄(赤褐色のサビ)」になり、それが大きな塊(フロック)となってお湯の中を漂うため、真っ赤な濁り湯になります。循環湯や、湯船の中で長時間お湯が滞留しているとこの最終形態に行き着きます。

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